ken-togo’s blog

勤務先とは関係のない個人の意見を述べたいと思います。そういう意見もあるんだな、と思っていただければ幸いです。

ガラパゴス日本と新しい日本(4)

私の専門は開発経済学で、大学院ではGustav Ranis先生に指導を受けました。(英語だとレィニスですが、日本語表記はラニスというのが多いので、以下ラニスと表記します)日本にも留学したことのある親日家の先生で、大変温厚な尊敬できる先生でした。

ラニス先生はJohn Fei先生と一緒にラニス・フェイ・モデルを1961年に発表されました。もう半世紀以上前ですね。

このモデルは経済発展の過程を説明するのに、2部門を使用しています。詳細は省きますが、1つの経済の中に「伝統的な部門」と「近代的部門」の2つの部門があり、「伝統的な部門」では余剰労働者(生産に貢献していない労働者)が存在し、彼らが生産性のより高い「近代的部門」に吸収されていくことによって(「近代的部門」が拡大していくことによって)、経済全体が成長していく、というモデルです。

今の日本経済も、この半世紀以上前に考え出された2部門モデルで説明できるのではないでしょうか。ガラパゴス日本が「伝統的部門」で、新しい日本が「近代的部門」と考えることが出来ると思います。

既に先見の明がある人達は「近代的部門」へ移行している兆候がありますから、この動きが加速すれば、日本はまた成長できると考えています。個々人の問題としては、自分が「伝統的部門」にいるのか、「近代的部門」にいるのか見分ける力が重要かなと思います。

ガラパゴス日本と新しい日本(3)

前回は日本に住んでいる人を、「今までの世の中がこのまま続くと考えて生活している人」と、「新しい情報を取り入れて絶えず準備して生活している人」の2つに分けてみましたが、今回は「自分の意見を持たない人」と「自分の意見を持つ人」の2つに分けて考えてみたいと思います。

私は大学の教員ですが、ゼミや授業で「君はどう思う?」と尋ねたときに、「私は〇〇だと思います。」ってすぐに返事が返ってくる人は少ないというのが実感です。

これは高校までの日本の教育に原因があるような気がしています。私が小学校~高校に通っていたのは、もう半世紀近く前なので今は違うかもしれませんが、学校で「君はどう思う?」って尋ねられたことは少ない気がします。

「君はどう思う?」って小さいころから尋ねられていたら、「私は〇〇だと思います。」ってすぐに答えられると思うんですよね。

「私は〇〇だと思います。」と言われたら、「ああ、そうなんだ。」で終らずに、「どうしてそう思うの?」と尋ねてあげると更に良い気がしますね。答えた人は、どうして自分がそう思うのか、「考え」なければならないですから。

実は私はゼミで野矢茂樹先生の『論理トレーニング』(1997/11/1、産業図書)という本を、20年以上使用し続けているんですが、まさにこのやりとり「君はどう思う?」→「私は〇〇だと思います。」→「どうしてそう思うの?」で、論理的な思考のトレーニングが出来るんですよね。

私のゼミ生には「経済学を理解することも世の中で生きていく上で助けになるけど、一番助けになるのは「論理的思考」が出来ることだから」と言い続けて20年です、笑。

自分の意見を持つことが出来ないと、「他人と同じことをしていれば安心」ってなるんじゃないでしょうか?それって結構危険なことだと思うんですが。

 

ガラパゴス日本と新しい日本(2)

いつの時代もそうなんでしょうけど、今までの世の中がこのまま続くと考えて生活している人と、新しい情報を取り入れて絶えず準備して生活している人がいるんだと思います。

私は1961年生まれなので、「Macintosh 128K」が発売された1984年は大学4年生でした。なんで、あのとき、この画期的な出来事に気が付かなかったのかと後悔しますが、気が付かない人は、気が付かないものなんでしょう。

訳あって、1986年まで大学にいて、就職するんですが、就職後、会社の新人融資で60万円ほど借金して「Macintosh Plus」を購入し、職場に置いて仕事に使用したのですが、それでも「Macintosh Plus」の中身(つまりプログラミング言語)まで興味が至りませんでした。

あのとき、なんでコンピューターは動くのかとか、なぜ興味が湧かなかったのか、不思議です。

今の時代はAIが登場し、これから世の中が激変すると思います。ひょっとすると今までの日本の教育、学歴社会、大企業に代表される日本的ビジネスが、あっという間に崩れ落ちる可能性もあります。

そのとき、どうやって「楽しく」生きていくのか、そのためには「何」を身に着けておけばよいのか、今から備えておくに越したことはないですよね。

そのためには、まずはSteve JobsやElon Muskの自伝でも読んでみますか?多くの示唆が得られるのではないでしょうか?

ガラパゴス日本と新しい日本(1)

25年もの長い間、殆ど経済成長が出来ていない日本ですが、ようく見ると良い変化が起きてきているような気がします。

私が最近、最も驚いたのは国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)です。不勉強と言えば、不勉強なのですが、今まで名前は知っていたのですが、実態をよく知りませんでした。

IBのDiplomaコースを提供している高等学校を訪問したり、IBのセミナーに参加したりして、とても良いプログラムであると思いました。また、IBを履修している高校生が増えていることも知りました。

一番良い点は、期末試験がバカロレアの本部により作成され、採点されるという点だと思います。学生の学修成果が、教えている当事者ではなく、第3者により評価されるという点が重要だと思います。

これは私の学部で提供しているパラレル・ディグリー・プログラム(PDP)も同じです。BScと呼ばれる専門課程では、LSEの教員が試験問題を作成し、採点します。PDPの学生の答案は、インドやシンガポールで学んでいる学生と同じ基準で評価されるわけです。

学習の成果は教えている機関ではなく、第三者に評価してもらった方が良いのではないでしょうか? その方が客観的で良いと思います。学生の顔も知らないわけですから、出来が悪ければ躊躇なく落第点が付きます。

2番目によいなと思ったのは、IBの試験では論理的な思考が試されるという点です。記述式の問題では、論理的、説得的な記述が求められます。暗記だけで済むような問題ではないということです。

そういう教育を受けた日本の高校生が増えていくと、日本の世の中が大きく変わっていくのではないでしょうか?

自分の子供にIB教育を受けさせるという決断をされた親御さん達に感服します。